【事業再構築指針】新分野展開
こちらは事業再構築指針の「新分野展開」の説明になります。
注意!!
- 令和3年3月29日の「事業再構築指針の手引き」の改定に伴い、修正しました。
- 「製品、商品もしくはサービス」は「製品等」と、「製造又は提供」は「製造等」と、「製造方法又は提供方法」は「製造方法等」と表現されています。
- 製造業の分野の事業再構築を行う場合には、「製品」、「製造」、「製造方法」としてお読みください。
- その他の分野(サービス業、小売業、卸売業など)で事業再構築を行う場合には、「製品等」は「商品」又は「サービス」、「製造等」は「提供」、「製造方法等」は「提供方法」などと適宜読み替えてください。
1.新分野展開について(定義)
- 「新分野展開」とは主たる業種又は主たる事業を変更することなく、新たな製品等を製造等し、新たな市場に進出することを指します。
- 「新分野展開」に該当するためには、「製品等の新規性要件」、「市場の新規性要件」、「売上高10%要件」の3つを満たす(=事業計画において示す)必要があります。
新分野展開の定義
- 中小企業等が主たる業種(※1)又は主たる事業(※2)を変更することなく、新たな製品等を製造等することにより、新たな市場に進出すること
注意!!
- (※1)直近決算期における売上高構成比率の最も高い事業が属する、総務省が定める日本標準産業分類に基づく大分類の産業
- (※2)直近決算期における売上高構成比率の最も高い事業が属する、総務省が定める日本標準産業分類に基づく中分類、小分類又は細分類の産業
新分野展開に該当するためには(事業計画で示す事項)
- 主たる事業又は主たる業種を変更する場合は、「【事業再構築指針】事業転換」又は「【事業再構築指針】業種転換」を参照してください。
- 【製品等の新規性要件】
- 新分野展開に該当するためには、新たな製品等を製造等する必要があります。
具体的な要件は、「2.製品等の新規性要件について」及び「3.製品等の新規性要件を満たさない場合」を参照してください。
- 新分野展開に該当するためには、新たな製品等を製造等する必要があります。
- 【市場の新規性要件】
- 新分野展開に該当するためには、新たな市場に進出する必要があります。 具体的な要件は、「4.市場の新規性要件について(定義)」及び「5.市場の新規性要件を満たさない場合」を参照してください。
- 【売上高10%要件】
- 3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品の売上高が総売上高の10%(※)以上となる計画を策定することが必要です。
注意!!
- (※)10%は申請するための最低条件です。新たな製品の売上高がより大きな割合となる計画を策定することで、審査においてより高い評価を受けることができる場合があります。
2.製品等の新規性要件について
- 製品等の新規性要件については、①過去に製造等した実績がないこと、②主要な設備を変更すること、③定量的に性能又は効能が異なること(計測できる場合)の3点を事業計画においてお示しください。
製品等の新規性要件についてお示しいただく事項
①過去に製造等した実績がないこと
- 過去に製造等していた製品等を再製造等することは、事業再構築によって、新たな製品等を製造等しているとはいえません。 過去に製造等した実績がないものにチャレンジすることをお示しください。
②製造等に用いる主要な設備を変更すること
- 既存の設備でも製造等可能な製品等を製造等することは、事業再構築によって、新たな製品等を製造等しているとはいえません。 主要な設備を変更することが新たな製品等を製造等するのに必要であることをお示しください。
③定量的に性能又は効能が異なること
(製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。)
- 性能や効能の違いを定量的に説明することで、新たな製品等であることをお示しください。
例
- 既存製品と比べ、新製品の強度、耐久性、軽さ、加工性、精度、速度、容量等が、X%向上する等
注意!!
- 「新規性」とは、事業再構築に取り組む中小企業等自身にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません。
3.製品等の新規性要件を満たさない場合
- 製品等の新規性要件を満たさない場合として、以下のようなものが考えられます。
製品等の新規性要件を満たさない場合
①「過去に製造等した実績がないこと」を満たさない場合
- 過去に製造等していた製品等を再製造等する場合は製品等の新規性要件を満たしません。
例
- 過去に一度製造していた自動車部品と同じ部品を再び製造する場合。
②「製造等に用いる主要な設備を変更すること」を満たさない場合
- 既存の製品等の製造等に必要な主な設備が、新製品等の製造等に必要な主な設備と変わらない場合は製品等の新規性要件を満たしません。
例
- これまでパウンドケーキの製造の際に用いていたオーブン機器と同じ機械を、新商品である焼きプリンの製造に使用する場合。
③「定量的に性能又は効能が異なること」を満たさない場合
(製品等の性能や効能が定量的に計測できる場合に限る。)
- 既存の製品等と新製品等の性能に有意な性能の差が認められない場合は製品等の新規性要件を満たしません。
例
- 従来から製造していた半導体と性能にほぼ差のない半導体を新たに製造するために設備を導入する場合。
④その他の場合
- 上記の他、「既存の製品等の製造量等を増やす場合」や「事業者の事業実態に照らして容易に製造等が可能な新製品等を製造等する場合」、「既存の製品等に容易な改変を加えた新製品等を製造等する場合」、「既存の製品等を単に組み合わせて新製品等を製造等する場合」にも製品等の新規性要件を満たしません。
例
- 自動車部品を製造している事業者が、単に既存部品の製造量を増やす場合。
- 自動車部品を製造している事業者が、新たに製造が容易なロボット用部品を製造する場合。
- 自動車部品を製造している事業者が、新たに既存の部品に単純な改変を加えてロボット用部品を製造する場合。
- 自動車部品を製造している事業者が、既存製品である2つの部品を単に組み合わせたロボット用部品を製造する場合。
4.市場の新規性要件について(定義)
- 市場の新規性要件については、①既存製品等と新製品等の代替性が低いことを事業計画においてお示しください。
市場の新規性要件についてお示しいただく事項
既存製品等と新製品等の代替性が低いこと
- 市場の新規性要件を満たすためには、新製品等を販売した際に、既存製品等の需要が単純に置き換わるのではなく、売上が販売前と比べて大きく減少しないことや、むしろ相乗効果により増大することを事業計画においてお示しください。
例
- 日本料理店が、新たにオンラインの料理教室を始める場合、オンライン料理教室を始めたことにより、日本料理店の売上は変わらない(むしろ宣伝による相乗効果により上がる)と考えられることから、市場の新規性要件を満たすと考えられる。
5.市場の新規性要件を満たさない場合
- 市場の新規性要件を満たさない場合として、以下のようなものが考えられます。
市場の新規性要件を満たさない場合
「既存製品等と新製品等の代替性が低いこと」を満たさない場合
- 既存の製品等とは別の製品等だが、対象とする市場が同一である場合(新製品等を販売した際に、既存製品等の需要がそのまま代替され、その売上が減少する場合)は市場の新規性要件を満たしません。
例
- アイスクリームを提供していた事業者が、新たにかき氷を販売するが、単純に従来の顧客がアイスクリームの代わりにかき氷を購入することを想定する事業計画を策定した場合、市場の新規性要件を満たさないと考えられる。
- 既存の製品等の市場の一部のみを対象とするものである場合は市場の新規性要件を満たしません。
例
- アイスクリームを提供している事業者が、バニラアイスクリームに特化して提供するが、単純に従来の顧客が新たに提供するバニラアイスクリームを購入することを想定する事業計画を策定した場合、市場の新規性要件を満たさないと考えられる。
注意!!
- 「新規性」とは、事業再構築に取り組む中小企業等自身にとっての新規性であり、世の中における新規性(日本初・世界初)ではありません。
6.新分野展開の要件を満たす例①
- 例えば、以下のような場合には、要件を満たすことから、新分野展開に該当します。
新分野展開の要件を満たす例(【例1】製造業の場合)
- 航空機用部品を製造していた製造業者が、業界全体が業績不振で厳しい環境下の中、新たに医療機器部品の製造に着手し、5年間の事業計画期間終了時点で、医療機器部品の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定している場合
要件 | 要件を満たす考え方 | |
製品等の新規性要件 |
過去に製造等した実績がないこと | 新たに製造する医療機器部品が、過去に製造した実績のない部品であれば、要件を満たす。 |
製造等に用いる主要な設備を変更すること | 医療機器部品を製造するため、航空機専用の生産設備とは異なる専用の生産設備が新たに必要であり、当該設備を導入する場合には、要件を満たす。 | |
定量的に性能又は効能が異なること |
新たに製造する医療機器部品と従来製造していた航空機用部品が異なる部品であれば、定量的に性能又は効能(強度や軽さ等)を比較することが難しいことを示すことで要件を満たす。 ただし、両部品が類似の製品であって、その性能(強度や軽さ等)を比較することが可能な場合には、差異を定量的に説明することで、要件を満たす。 |
|
市場の新規性要件 | 既存製品等と新製品等の代替性が低いこと | 医療機器部品と航空機用部品では、その用途が全く異なり、医療機器部品を新たに製造・販売することによって、航空機用部品の需要が代替され、売上が減少することは見込まれないと考えられることを説明することで、要件を満たす。 |
売上高10%要件 | 3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品等の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定すること | 5年間の事業計画期間終了後、医療機器部品の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定することで要件を満たす。 |
7.新分野展開の要件を満たす例②
新分野展開の要件を満たす例(【例2】不動産業の場合)
- 都心部の駅前にビジネス客向けのウィークリーマンションを営んでいたが、テレワーク需要の増加を踏まえて、客室の一部をテレワークスペースや小会議室に改装するとともにオフィス機器を導入し、3年間の事業計画期間終了時点で、当該レンタルオフィス業の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定している場合
要件 | 要件を満たす考え方 | |
製品等の新規性要件 |
過去に製造等した実績がないこと | 過去同様のレンタルオフィス業を営んだことがなければ、要件を満たす。 |
製造等に用いる主要な設備を変更すること | 新たに客室の改装やオフィス機器の導入が必要であり、その費用がかかる場合には、要件を満たす。 | |
定量的に性能又は効能が異なること |
ウィークリーマンションとレンタルオフィスでは、提供するサービスの種類が異なり、定量的に性能又は効能を比較することが難しいことを示すことで要件を満たす。 |
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市場の新規性要件 | 既存製品等と新製品等の代替性が低いこと | 新たにレンタルオフィスを始めたことで、ウィークリーマンションの需要が代替され、売上高が減少するといった影響が見込まれないと考えられることを説明することで、要件を満たす。 |
売上高10%要件 | 3~5年間の事業計画期間終了後、新たな製品等の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定すること | 3年間の事業計画期間終了後、レンタルオフィス業の売上高が総売上高の10%以上となる計画を策定することで要件を満たす。 |
当該記事は、内容をざっくりと掴んでいただくことを目的にしている為、不完全な場合があります。
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